六本木ヒルズ ウェストウォーク2階 南吹抜けで、池坊麻布橘会支所による超大作四方正面立花と、池坊専宗青年部代表の写真のコラボレーションによるインスタレーション「はざま、生」が公開。天と地のはざまに立つ人と花の姿を、吹き抜ける大きな空間に表現しました。
直径6メートルの大きな空間に、池坊専宗様の大きな写真を2枚、高さ4メートルの松を中心に梅、枝垂柳、千両など新年に相応しい草木を取り合わせた厳かな立花のコラボレーション。
どこから見てもそれぞれ違う表情を表した作品は、12日間たくさんの方にご覧いただきました。

「はざま、生」
Between Spheres, Alive

花は天と地のあわいにあり
Flowers exist between heaven and earth.

光と翳の境に人は佇む
We stand on the border between light and dark.

過去に今が確かに交わり
Past and present certainly interweave.

わたしと自然の重なる空間に
In this space where nature and I meet.

新年を迎える心へ静謐な祝福を
A serene blessing for the new year.

Special Interview

池坊専宗様
スペシャルインタビュー

2026年1月7日 午後6時30分
六本木ヒルズ セカンドウォーク南吹抜け
超大作新年花&池坊専宗様の写真前にて
スペシャルインタビュー

専宗様、本日はコラボレーションの最終日に会場の六本木ヒルズまでお越しくださいまして、有難うございます。皆、とても感激しています。後、五時間程で十二日間の展示が終わりますが、せっかくたくさんのメンバーが集まりましたので、記念に専宗様へインタビューをさせていただければと思います。宜しくお願いいたします。
先ず、令和八年が始まりました。新年の抱負についてお聞かせいただけますか。

一昨日(一月五日)の京都家元の初いけ式でも
私達、花をいけるものが大事にしたいものが二つある、とお話ししました。
以前、法律の偉い先生が仰っていましたが、円というのは焦点(中心点)が一つで、それもいいけれど弁護士や法曹を学ぶ者は、個人の弁護をすると同時に、社会の共通の価値というか、その正義が少しずつでも守られることを願って社会全体にも尽くす、そのどちらも大切である。
個人も守って、社会も守る、それら二つの焦点を持つ楕円、楕円は二つ焦点があるのですが、その楕円の形を取るのが良い法曹の姿なんだと。それをよく覚えています。
我々も自分の技術が上手くなることを追い求めているだけでは、自己陶酔というか大衆の支持を失ってしまう、あるいは大衆に迎合していくばかりでは、いけばなの世界の深みが失われていく。そういう意味では、自らの技術を磨きつつも、社会に開かれている存在であるというこの二つを、自分で深めていくことで世界に繋がっていく。
どちらも大切にして、皆さんと一緒に花をいけていきたいと思います。

東京大学の法学部を卒業された専宗様、学びの中で池坊いけばなにも繋がるものを感じ取られたのだと思いました。「楕円」についても新たな発見、今年もいろいろなお話を伺いたいです。
さて次は、今回の「 はざま、生 」のコラボレーションですが、専宗様のお写真を床面に大きなシート二枚にして飾っています。テーマはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

二つあります。 
一つはこの空間を生かした方がいいということ。
この場所は回廊がぐるっと繋がっていて、吹き抜けで天井も高く、いろいろなところから見られる環境です。人もたくさん通っていますから、床の間のように一つの目線から見るのではなくて、ニ階からも三階からも見れた方が良いのではないかなと。空間全体で楽しんでもらったほうがいいかなと思いました。
写真というと立てる形が多いのですが、それでは方向も1つに絞られるし、この花も隠してしまうので床に貼って。そうすると花とも生かし合うことができます。僕が年末にこちらに来た時も三階の通路から、たくさんの方が花と写真を覗きこんだりしていました。

もう一つは、テーマ「  はざま、生 」について。
皆さんは生花(ショウカと読み、花形の名称)をやっていて、聞いたことがあるかもしれませんが江戸の末期から明治にかけて、生花は陰陽二つのところから真、副、体の三儀をつないでいくようになっていきました。それが、途中から「天、地、人」になぞらえて真、副、体を意味づけるようになった。他流では、真、副、体があったら、真が天、体が地、副との間にあるのが人と考えるのですが、池坊では、真が人、副が天、体が地と。水際に並んでいるという意味では天と地に挟まれている。その真ん中に立っているものを人になぞらえているんです。それは、植物と同じように僕らも生まれや育ちはなかなか左右できないところもあり、真と同じように歪みを持っています。それでも、空に立ちのぼろうという姿を、自ら花をいけることを通して自分を見つめ命を全うしていく。そういう意味で、この天地人をなぞらえています。
生花は植物の命と自らの命を尋ね合わせる、立花もそうですし。天と地の間でいろいろなものに左右される中で、人も花も命を全うしていく。そういう内容にしてみました。
今回の作品、僕は個人的にはいい感じになったかな、と思います。

このお写真は、いつ頃お撮りになったのですか。

十一月から十二月にかけて、この冬ですね。

三枚綴りですが、この短い方は大地の地の方、この長い方は天なんですが、いずれも私の家の近所で撮りました。

大地の方は年を越す前の水仙の若い姿。天の方は桜の木です。冬場ですから花はついていませんが、その水仙と桜をいろいろな朝、夜、曇り、雨の日、あるいは日を違えていろいろな時間帯、いろいろなタイミングで撮って、そこに生きる水仙との出会いを多層的というか、水仙だからということでなくて、この場所にある水仙との出会いを天と地の写真の中に気持ちをこめた、という感じで撮りました。

あちらの水仙ですね。こうしてお話を伺いながら改めて見ると、あと数時間の展示ですが思いが深まりますね。

そう、ちょっと名残おしいですね。

名残おしいです。
先程、専宗様はこの写真のシートをお持ち帰りになれたら池坊東京会館に飾りたいですね、と仰っていましたが。

結構綺麗な状態ですから、貼れるといいですね。会館の皆さんもびっくりされますから。

専宗様にこのように直接お話を伺うと、お写真も奥が深まって味わいがいっそう出ます。
本当に、今回は素晴らしい経験をさせていただきました。
六本木ヒルズの皆様にもとても好評で、このような和の世界が今まで足りなかった、毎日見てもあきないという感想をいただきました。

嬉しいですね。

また、Instagramやfacebookにこのコラボレーションの動画をアップしましたら、17,000人の閲覧者数がありました。
国内だけでなく海外の方も関心を寄せてくださって、こちらも本当に良かったと感謝しています。

他のニュースサイトでも取り上げられたりしていましたね。また、ここを通り掛かる人達が年齢関係なく、立ちどまってわいわいと写真を撮っていました。惹きつける力があるのだと思います。

良かったです。皆様に感謝申し上げます。
最近お稽古を始められたAIの会社の代表の方が、とてもいけばなに熱心で、先ほどもこちらへ最終日ということでおいでくださいました。その方とお話していますと、これからのいけばな、華道の世界はAIによっても変化していく部分と、変わらない不易の部分があると思うのですが、専宗様にとって今の時代のいけばなはどのようにお考えになりますでしょうか。

今の科学技術の進歩は、いけばなと喧嘩することではないと思います。逆にいうと、AIでお花の写真を出しても、いけばなは本人がいけないと面白くありませんから、命と命のまじわりという意味では、いけばなの持つ意味は昔の時代から全く変わらない。今は、命あるものとか、ニュアンスのあるものの価値が高まっていますし、その扱い方をよく考えなければいけないと。そういう意味では、昔の池坊の花伝書と同じように、命に寄り添っていくのを突き詰める方向性になると、池坊の花がよりしなやかに強く社会に対しても発信していけると思います。

有難うございます。今回、直接このようにお話を伺える機会がありましたこと、ここに一緒にいます生徒皆と心より感謝申し上げます。専宗様の穏やかで優しい語り口でのお話しが、私たちのこころに温かく広がっていきました。
今年も池坊いけばなを学び、草木に心を寄りそわせながら充実した時間を過ごしたいと思います。
専宗様の一年のご健康、そしてさらなるご活躍をみんなで祈念しております!