立花 視界が広がる瞬間
啓蟄を過ぎ、着実に春へと向かう3月の日曜日。
先週末からの寒波で、まるで冬に逆戻りしたような冷え込みでした。
けれどもこの日の花材は、啓翁桜・小手毬・菜の花など、見ているだけで気分がぱっと華やぐ、まさに春の装いです。
今回で29瓶目となる立花のお稽古。
始めた頃は、役枝の名前や役割を覚えるだけでも大変でした。
さらに手元もおぼつかず、時間ばかりが過ぎていって、仕上がりのイメージを考える余裕なんてまるでありませんでした。
ですが今年に入り、仕事の効率化の影響か、時間にゆとりが生まれ、全体像をイメージしながら手を動かせるようになってきた気がします。
そのおかげで、頭の中のイメージと手先の動きがつながりはじめ、一瓶ごとにその結びつきがどんどん太くなっていくように思います。
🟪🟩花形 立花正風体
花材 桜、コデマリ、檜、アイリス、若松、著莪、伊吹、柾木、椿、菜の花

森先生からのお稽古でいただく教えの理解も、ぐっと深まってきました。
陰陽に始まり、遠近、濃淡、粗密など、あらゆる事象を「対」で考える視点が少しずつ身についてきた実感があります。
ときには、自分が登り始めた山の大きさに戸惑うこともあります。
それでも、お稽古を通じて視界が広がる瞬間を感じられるようになり、小さな喜びを見つけることも増えてきました。
これからも季節の移ろいを楽しみながら、一瓶一瓶に、今まで以上に心を寄せていきたいと思っています。
宮師雄一