旅衣
村田 康子 (正教授三級)
花形 : 自由花・タペストリー
花材名 : 熊笹・椿・千両・菊
新しい春がまた巡ってきました。
冴えわたる空を見上げ 大切な人たちが 今年も一年 健やかであることを祈る
歌舞伎の『勧進帳』を題材に、その思いを託しいけました。
旅の衣は篠懸の〜(たびのころもは すずかけの)という長唄の詞章から始まる『勧進帳』は、
源義経と従者武蔵坊弁慶らが奥州へ落ち延びる旅の途中、加賀国の関所で起こる出来事を描きます。
姿や立居振る舞いの豪壮さの裏に秘めた弁慶の 主人・義経を思い敬う心
義経が 己のために苦労をかけてしまった弁慶を思いやる心
表には出さずとも関守の富樫が 義経一行にかける深い情け
他者を思いやる心が 『勧進帳』にはあふれています。
壁にかけた布を舞台に、私の思いも広がりました。
これからも、心のこもったいけばなをいけられるよう精進してまいります。